ご挨拶
本邦における大腸腫瘍性病変ならびに炎症性腸疾患は増加傾向にあり、将来にわたってもこの傾向は継続すると考えられております。これらの疾患に対する治療としては腫瘍性病変では内視鏡治療や外科治療、抗がん剤治療が展開され、炎症性腸疾患では5-ASA製剤、免疫抑制剤や各種抗体治療薬などの内科的治療が主流であり、いずれの疾患においても早期に診断されることが、その後の治療効果を有利に導くことは誰しもが疑わない共通認識です。
わが国の消化管疾患における画像診断は国際的にも高い評価を受けており、歴史的には単純X線バリウム検査に始まり、空気との二重造影、そして現在は内視鏡検査主流となっております。内視鏡検査ではImage Enhanced Endoscopy(IEE)の発達よる疾患の早期発見・診断の画像診断ばかりではなく、組織採取や治療を行うことのメリットが挙げられる一方で、消化管全体像の把握が不得手、内視鏡医の充足不足や技術レベルの問題を指摘されることもあります。
さて近年、コンピュータ解析ソフトの発達によりCTやMRIより得られた画像データを用い様々な画像表現が可能となったVirtual Reality(仮想現実、以下VR)の世界が展開され、消化管疾患の診断に導入する試みが成されつつあります。VRには一定の条件を満たすCT・MRIであれば全国どの施設でも施行が可能であること、医師と被験者を時空的分離(遠隔診断)することが可能であること、再現性や多方向からの画像表現が可能であること、消化管全体像の把握や消化管周囲の情報を得ることができる、など様々なメリットがあります。これまでVRは一部の施設の放射線科医や放射線技師が手探りで経験やノウハウを積み上げてきました。そして徐々に同好の士が集まり情報交換を行う集会も散発的に発足してまいりましたが、統一した方向性には欠けるものでありました。
そこでわれわれは、将来を見据えた統一した学問(方向性と理論)の確立、VR技術・読影の発展普及、社会への還元と情報発信の必要性を感じ、「消化管Virtual Reality学会」を発足する運びとなりました。
ご参会頂けるのは広く消化管疾患に携わる医師・看護師・技師、さらには関連企業にも門戸を開放致します。みなさまの英知、技術を結集して消化管疾患の患者さまにとって福音となるような学会に育てて頂けることを願っています。ご参加のほど何卒よろしくお願いいたします。
平成29年11月吉日
消化管Virtual Reality学会発足委員会
飯沼 元、小林広幸、田中卓雄、服部昌志、満崎克彦、山野泰穂
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